2022年01月21日

筆の種類あれこれ

お正月気分も抜けて、いよいよ2022年が動き出した今日このごろ。

気持ちも新たに、久しぶりの画材講座ですひらめき

今回は、絵画に使われる筆の種類について見ていきたいとおもいます。





■ 穂先の形の種類 




【 平筆 】


平筆

画材を問わずオーソドックスな筆。先端が平らにカットされているため直線的な絵を描くときや広い面の塗り、あまり筆跡を残したくないベタ塗りのような使い方に最適な筆といえます。大きさ長さ太さ、斜めカットなどバリエーション多数。特にアクリル画では多く使われます。



【 丸筆 】


丸筆


オーソドックスな筆その2。長さ・太さ共にかなりのバリエーションが発売されています。水含みが良く、太い線から細い線まで自在に描ける反面、使いこなすにはそれなりに慣れが必要な印象。ほぼこれだけで屋外スケッチを仕上げてみたりと、水彩画ではメインの筆になることが多いでしょう。



【 フィルバート 】


フィルバート筆

こちらは平筆の角を若干丸くしたような形の筆。上記二つほどの分かりやすい特徴もなく、いろんな意味で中くらいの筆です。悪口のようですが、それはつまりとっても使いやすいということ。どんな画材のどんな局面でも主力になれる優等生といった感じでしょうか。悩んだらとりあえずこれで大丈夫!というくらい安心感があります。



【 面相筆 】


めんそう筆

いわゆる極細筆のうち、特に日本画系の筆を面相筆(めんそうふで)といいます。細かい顔などを描くときに使われたからそう呼ぶのだとか。もちろん日本画で使う前提のものですが、細密描写の場合などは油彩も含めて多くの画材で選択肢になってきます。細いものだともうホントめっちゃ細いのまでありす。何に使うんじゃいってくらい細いのあります。必要あれば。


【 扇筆 】


扇筆


オオギ筆。特殊な形状でとっつきにくいと思われがちですが、ぼかしやにじみ、透明技法による色の調整など案外と使い所の多い筆です。この筆に限らずですが、「こんな場面で使いましょう」というのが厳格に決まっているわけではないので、アイデア次第でもっと色々な用途があるでしょう。試しに一本という筆。



【 刷毛・叩き筆 】


刷毛・叩き筆

ハケに関しては、特に水彩で空などの広い範囲を描くときなどは、有ると無いとで大違いになります。絵の具や水の含みが段違いに良いため、他にも油彩や日本画の下地作り、下塗り、仕上げのニス塗り、またアクリルのパネル水張りにも使うので、必要を感じたら優先的に一本は用意しておきたいところです。

右側のタタキ筆ですが、こちらは通常の筆のように上下左右にストロークして使うのではなく、画面に垂直に叩きつける要領で使用します。他とは全く違う独特の表現になりますので、ご興味あれば。






■ 毛の種類 





ここからは筆に使われる毛の種類を簡単に。


まず、画材店に行くと大まかに「水彩筆」「油彩筆」「日本画筆」などに分類されていることが多いと思いますが、実際にはほとんどの筆が他にも流用できます。傾向としては、油彩筆が一番硬めでコシがあり、日本画筆が柔らかく繊細な使い勝手のものが多いです。また水彩筆は机で描くのを想定して持ち手が短く作られているという違いがあります。

また、他の画材では使わない筆も一部存在し、その一つが油彩用「豚毛筆」です。こちらは水を吸わないので基本的には油彩か、厚塗りのアクリルで使用するくらいにしましょう。また、日本画筆に多くみられる「羊毛(山羊)」などは非常に繊細な毛質の為、特に乾燥の早いアクリル絵具などでは意識的にすぐ洗うよう心がけましょう。

その他、メジャーなものですとコリンスキー(赤テン)、セーブル(クロテン)、馬毛、イタチ毛などの獣毛はどの画材にも使用できます。ナイロンやリセーブルは人工毛で上記と少し使い勝手が変わりますが、どちらが上という訳ではないので気に入ったものを使っていただければと思います。






以上、ざっくりですが、筆を揃えるときのご参考にしていただければ。


「弘法筆を選ばず」という言葉もありますが、現代の筆は各画材メーカーが研究を重ねて作り上げたものです。無事弘法になるその日までは、バンバン筆の力に頼って参りましょう!!皆様がお気に入りの一本と出会えますように晴れ










posted by 月島アートスクール at 10:43 | Comment(0) | 絵画講座
2021年05月07日

空気遠近法

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前回までは、絵画のパース・透視図法について見てきました。ざっくり理解できたでしょうか?






これらの考え方は主にヨーロッパで発達し、江戸時代に日本に伝わったと言われるもので、当時の日本の画家たちに大変な衝撃を与えたといいます。


では、それまで日本に遠近法がなかったのかというと?


今回は、逆に東洋で発達したと言われる「空気遠近法」を見て見ましょう目目







■ 空気遠近法・遠くのものは霞む!



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普通、空気遠近方の説明には遠くの山や森を例に出すのですが……


教室の周辺でもビル群などの遠景で実際に確認することができます。


今回は佃大橋から隅田川の向こうを眺めて見ましょう晴れ


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上の写真では、手前のビルはしっかり影になっているのに対し、遠くのビルはみんな薄い水色のように見えます。


これは空気中の水蒸気や塵によって、遠くのものほど見えにくくなる事が原因で、例えば空気のない宇宙空間では起こりません。


また、乾燥したヨーロッパよりも高温多湿なアジアの方が顕著な現象でもあります。


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単に淡く・薄くなるというよりは空の色に近くなるイメージで、夕方ならオレンジ、夜景だと暗いブルーになりますね夜


空気遠近法はご覧の様に、風景画、それもより広い範囲を遠くから描くときにこそ最も活躍してくれる技法です。


同じ遠近感の表現でも、日本や中国でたくさん描かれてきた山水画などでは厳密な透視図法より


もっとスケールの大きな空気遠近法の方が必要な技術だったのかもしれませんねひらめき











■ まとめ


さて、ひとまず遠近法関連はここまでになります。


非常に大雑把に説明してきましたが、大切なのは「技法」というのは単なる「道具」の一つだという事かと思います。


必要なときには使えるように。しかし固執しすぎて、描きたいものを見失わないように。


適度に活用しながら、ご自身の作品と楽しく向き合っていただければと思いますかわいいかわいい



posted by 月島アートスクール at 12:22 | Comment(0) | 絵画講座
2021年04月30日

絵画のパースB

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今回も、絵画のパースについて見ていきましょうかわいいかわいい




■ 俯瞰(ふかん)とあおり


今回はアイレベルについて考えます。


アイレベルというのは視点の“高さ”のことで、対象を見上げているのか、もしくは見下ろしているのかを表します。


例えば、上の写真ではキューブと円柱を見下ろしていることがわかるかと思います。これが俯瞰構図。


上の面が見えているのでわかりやすいですねひらめき


今回は円柱に注目してみましょう。



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今度は見上げてみました。これが“アオリ”です。


円柱の上面の円が見えなくなり、丸みを帯びた側面のみが見えています。


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次にちょうど真横くらいから見てみましょう。


上面の円が一直線になり俯瞰でもあおりでもありません。


ここがアイレベル!!


全てのパースは今一直線になっているこの高さに向かって小さくなっていきます。


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キューブでも同じ様に、俯瞰でもあおりでもなく一直線に見える高さがアイレベル(赤線)。



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この赤線より下にあるものは見下ろす俯瞰構図になり、上なら見上げるあおり構図になります。


静物画などの場合は、ほとんどが線より下の俯瞰構図になることが多いため気にしなくても描けますが、


風景画などの場合は特に重要になる概念で、このアイレベルがそのまま地平線になります。


自分が今描いている物を、果たして見上げているのか見下ろしているのか、、


意識して描いてみると、よりパースの理解も深まるでしょう晴れ






さて、次回は「空気遠近法」です。



posted by 月島アートスクール at 10:26 | Comment(0) | 絵画講座
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